Mugichoko's blog

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しがない研究者のプログラミングを中心としたメモ書き.

「英語論文を書くってどゆこと?」に答えてくれる資料集

数年前に出身研究室の学生から「Technical Writingを学ぶための資料を探している」と聞き,当時,自分なりにまとめたもの(以下,資料集)をブログ用に再編・加筆し公開しようと思います.

最初は役立つリンクだけを張って終わりにしようと思ったのですが,書いているうちに伝えたいことが増えていき,ドキュメント形式になってしまいました.あくまでもAR研究者の私個人の考えが書かれたものなので,分野や研究室の方針にそぐわない内容もあるかと思いますが悪しからず.

はじめに

情報工学を専攻する学生や研究者として,世の中に必要とされている問題が何かを見極め,それを解決する方法を調べ,既存手法を組み合わせ,時には新しいものを考え,それを使って解き,結果を論文としてまとめます.つまり,論文が世に出版 (publish) されて始めて,あなたの研究が成就します.その意味で,「論文を書く」=「あなたの成果をもってして世に貢献する (contribute)」行為ということになります.

よって,正しい問題意識や思想なく,論文を書く技術 (Technical Writing) だけを得ても何も意味がないということをここでまず指摘しておきたいです.

適切な問題意識を持ちたい君へ

書く技術

いよいよ書く技術についてですが,まず伝えておきたいことがあります.論文を書くということは最終成果報告を世界に向けて出版するという観点から,プロフェッショナルの仕事が求められます.その意味で論文は作文やエッセイとは一線を画す出版物です.よって,学生の段階で最初から完璧にこれを書き終えることはほぼ不可能といえます.

鉛筆の絵がちょっと上手いからといって,ペン入れやトーンの貼り方といった技術を知らない人がプロの漫画家になれないのと同じです.出版物として成り立たせるための書き方を知る必要があります.これがTechnical Writingです.

さて,始めに書いた研究遂行の流れが語られる上で,最終成果物である論文が最後に登場するのが常ですね.しかし,実際のところ,論文は研究の初期段階で書き始めるのがよいでしょう.

論文は実験結果が出てから書くという人がいますが,よっぽどの実力がないとこの方法は上手くいきません.なぜなら,問題を文字に起こせないと,自分が何の問題に挑戦しているのか日々の生活で見失ってしまうからです.もしくは,最終成果報告書である論文には不要なことを行ってしまうことになるからです.

ここで,アイデアだけがある状態でどう論文を書き始めるのか具体的に伝えましょう.まず最初に,自分の研究が世の何に貢献できるのかを箇条書きにし,将来得られそうな結果や図などがどんなものなのか想像して実際に描いてみるなどしながら,適当に1ページぴらにまとめるようなところから始めます.この段階では解き方は特に気にしません.

ここで言いたいことは,つまり,論文を「書き始める」ことですら,一定の経験が要求されるということです.これが,経験の少ない学生がやろうとしても事実上不可能だ,とした理由です.なので,よく分からないことは経験の豊富なポスドクや教員に尋ねたり,任せたりする他ありません.

そうはいっても,最低限のルールを知らないことには何も始まらないのでこの資料集が存在しています.まずは自分なりに書いてみる.それを論文の書き方を知っている人に見てもらう.こういったところから,始めるのもよいでしょう.また,あなたの分野で生きる人達が何を重視しているのか学ぶ上で,この資料集は有用でしょう.

以下のWebサイトが良いポータルになっています.一通りのWebサイトに目を通してみることから始めましょう.的を射ていることを書いている人々の内容はすべて同じだということに気が付くはずです.なので,複数の資料を参考にする場合,共通項目を探すことをお勧めします.

控えめに言って何も知らない君へ

論文を書き投稿する一通りの流れを知りたい君へ

絵は得意じゃないのに論文に図は必須!オワタ!!と思っている君へ

英語で書く

英語で論文を書くことの必要性は論文の目的からして明らかです.英語が苦手だという嘆きがよく学生から聞かれますが,以下の書籍にあるような考え方を持つのはどうでしょうか.皆がやっていることは日本語を英語に直すことのようですが,実際にやらないといけないことは,日本語と英語でまず考えている観点がそもそも違うということを理解することです.

そもそも英語ムズイです... と落ち込んでいる君へ

英語論文書いた!でも,なんとなく上手く伝えられないというハイレベルな君へ

※以下2冊は逆引き事典的に使うべき書籍

世界最先端の研究とは

少しTechnical Writingの文脈から離れますが,大事なことなので書き残します.情報工学分野の学生にとっては,数学的な真新しさのハッキリしないが実用的な内容の論文,いわゆるシステム論文に取り組むことに躊躇することがあると思います.こうした技術的な知見も認められるべきだと考えるのが情報工学分野です.心配無用です.

世界最先端って言われても... 何か面白いシステムを作ったではダメ?と悩む君へ

さいごに

この資料集は,私が学生の時分に知っておきたかった内容の宝庫となるように作ったものです.皆さんの論文が世界に誇れるものになるよう願ってやみません.また,皆さんの実力があればそれも可能だと固く信じています.